目立ちたくない子ども時代から、見られる役者に。
モデル・俳優の瀬戸かほさん。
スペシャルインタビューのトップバッターは、ラシットのイメージモデルとしてご登場いただくなど、長くご一緒してきたモデル・俳優の瀬戸かほさん。大学生のころ、知り合いが撮ってくれた写真をSNSに投稿したことがきっかけでモデル活動をスタートし、現在は役者としても活躍の幅を広げる瀬戸さんですが、その幼少期は意外にも「目立ちたくないタイプだった」といいます。人に見られる職業を目指すようになったきっかけを探るため、20年前ーー、瀬戸さんの小学生時代から順を追って思い返していきました。
オシャレは自分のために楽しむ。
「コロナ禍の影響で外に出る機会が減ったので、オシャレから遠ざかっていたんですよね」
大学時代は被服学科に通っていて、もともとオシャレが好きだったという瀬戸さん。自粛期間を通して、あらためてファッションの大切さに気づいたといいます。
「ずっと家にいたので、あるときスーパーに行くためにおめかしして、お気に入りのバッグを持っていったんです。そしたら、塞ぎ込んでいた気持ちが晴れて、元気になって。オシャレって誰かのためじゃなく、自分のために楽しむものなんだなって思いました」
バッグはデザインを重視し、次に機能。
「交通系のICカードやリップクリームを入れるポケットがあること、飲み物が入る大きさであることを基準に選んでいます。バッグはいくつか持っているんですが、中身を入れ替えるのが大変なので、基本的にひとつのバッグをメインにして、服を合わせることもあります」
撮影では、『SHOPPER』のバーガンディーとネイビーのバッグをコーディネートしていただきました。
「バーガンディーは、色がすごく素敵。バッグをメインに、服を大人しめの色で合わせてもいいかもしれないですね。ネイビーは普段使いはもちろん、おしゃれしたいときにも、合わせやすそう。ポケット重視派としては(笑)、中にポケットがあるのも嬉しいです」
自分に自信のなかった学生時代。
瀬戸さんがモデルをはじめたきっかけは、自身の写真をSNSにアップするようになったこと。2014年ごろからTwitterなどで話題になり、それがお仕事につながっていきました。ずっと目立つタイプだったのかと思いきや、小学生のころは自分に自信がないタイプだったそう。
「ゲームばかりしていたら目が悪くなってしまい、小学3年生のときからメガネをかけはじめたんです。まだメガネをかけている子が少なくて、かわかわれることもありました。そういう経験を経て、もともとあったわけじゃない自信が余計になくなってしまって……。
4年生のときには学校の演奏会で指揮者を募集していて、楽器ができないから立候補したんですけど、指揮者って目立つじゃないですか。それを想定できていなかったので、いざやることになったら緊張しちゃうし、『指揮が見えない』と言われたりして。ああ、私は目立たない場所にいたいなって思いました(笑)」
中学に進学すると、バレーボール部に入部。これを機にメガネをやめると、「モデルを目指してみたら?」と同級生に声をかけられることもありました。
「でもまったく自信がなかったので、モデルになろうだなんて微塵も思わなかったです」
自身のことを「真面目」と評する瀬戸さん。進路も親の勧めるままに高校を選びます。
「あまり自分から何かしたいとか、選ぶということがなかったように思います。もちろん、真面目なので高校をサボるなんてできるはずもなく、永遠の憧れですね。そんななかで『けいおん!』というアニメに憧れて軽音楽部に入り、ベースとボーカルを担当しました。バンドをやったはいいけれど、バンドって目立ちやすいんですよね。そこも想定できていませんでした(笑)」
目立ちたくないのに、いつのまにか目立つ方へと引き寄せられてしまうし、知らず知らずのうちに選んでしまっている……そんな学生時代を送った瀬戸さん。高校生のころに出会った家庭科の先生に影響され、大学では被服学科へ。ファッション研究会のサークルに入り、学祭や地域のファッションショーなどで、服作りやモデルを経験します。
「そうしているうちに、『写真を撮りたい』と言ってくださった方がいて、撮ってもらうようになりました。プリクラや写真に映るのがずっと苦手だったんですけど、写真をSNSに載せてみたら見てくれた方がいて嬉しかった。20歳の夏にお仕事を初めていただき、大学に通いながらフリーランスでモデル活動もスタートしました」
そこから映像やミュージックビデオの仕事にもつながっていくことに。大学卒業前の2015年には、人気マンガを原作とした映画『orange‐オレンジ‐』に出演し、クラスメイト役を演じました。
「初めての映画作品なのに規模が大きすぎて緊張しました……。ちょうど就活もはじまる時期だったのですが、もともとの安定志向もあって、『この仕事を一生やるかどうかはわからないな』というのがこのときの正直な気持ちでした」
「これからもお芝居を続けていきたい」
大学卒業後は、オーディションをひたすら受け続ける日々。
「芝居ってなんなんだろう、モデルってなんだろう、自分ってなんだろうって、悶々と考えていた時期がありました。まわりの友人がちゃんと働いているなかで、自分はフラフラしているように思えて、このまま続けていいんだろうかという思いを抱えながら」
転機が訪れたのは、2017年。映画監督・プロデューサーである越川道夫氏主宰のワークショップに通ったとき、初めて何かを掴めた気がしたといいます。
「それまでは自信がないうえに、お芝居をすることに楽しさを見出すことができませんでした。『自信を持って、感情に従って気持ちの機微を大切にしてお芝居してみるといい』と、越川監督に助言をいただいてから、全部じゃないけど、こういうことなのかなって掴めた気がしたんです」
2019年公開の映画『愛の小さな歴史-誰でもない恋人たちの風景vol.1-』も、越川道夫監督に声をかけられ、主演のユリ役に抜擢。初めてヌードに挑戦したことでも話題となりました。
「監督にお話をいただいたときに、『俺はすべて賭けるつもりだけど、瀬戸はすべて賭けられるか。俺のことを信じられるか』と聞かれました。ヌードに抵抗ないわけじゃなかったですが、すべて賭けたいと思ったんです。
そのあとに役者をやめてしまうか、続けようと思えるかは、撮影が終わるまではわからなかったけれど、撮影後に監督から『お芝居を続けてほしい』と言われて。認めていただけたようですごく嬉しくて……、今後も役者を続けていきたいと強く思いました」
私生活では2019年に保護猫のテンちゃんを迎え、今年にはYouTubeチャンネルをスタートした瀬戸さん。結婚も公表しました。
小学生から大人になるまでを振り返り、仕事もプライベートも充実しているように見えますが、瀬戸さんにとってこの20年はどんな時間だったのでしょうか。
「自分としてはがむしゃらに泳いできたけど、流れるようにたどり着いたな、という感じ(笑)。こういう風になるなんて思っていなかったけど、いろんな考えが変わっていって今に至ったんだなと、振り返ってみて思いました。
YouTubeをはじめたきっかけは、自粛期間中に暇だったので、何か発信できたらいいなと思ってのこと。写真が苦手だった私には、記録があまり残っていないのですが、そのときそのときの自分のことを残していくのは大事だなとあらためて思いました。この先の20年も、何かしらのかたちで記録を残していきたいです」
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- photo: WATARU KAKUTA
- styling: MARI NAGASAKA
- hair&make-up: YUKA TOYAMA (mod’s hair)
- text: CHIHIRO KURIMOTO